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最近のボヤキ・・・収穫が良くないんですよね。 [本]

人のおススメが自分に合うとは限らない

最近少し体調を崩し気味で仕事以外に病院通いという新しいタスクができました。仕事が捗らないのが難点ですが、自分の業務のピークが過ぎた頃ということと休みが取りやすい職場環境に甘えて先月は猛暑の中、夏休み返上で病院通いをしていました。国立の大きな病院なので待ち時間が長い長い。毎回手弁当で通わないといけないほどです(汗)。この病院の待ち時間に本を読んでいるのですが最近blogで紹介したいと思える作品が全くなく、本の収穫の打率が下がり気味で気落ちをしています・・・。

私が本を選ぶ時に参考にするのはAmazonのレビューだったり、お気に入りの作品から膨らませて行って新しい本をゲットします。勿論インターネットのブロガーさんの記事も逐一確認していますが、中には出版社から本を無償で提供されているプロのブロガーさんもいるので、この辺はあまりあてになりません。自分と好みが同じブロガーさんが紹介する本は大体外れないので安心して買えます。周辺で凄く評価が高い作品でも実際に読んでみるとそれほどでもないということが結構あり、今年の夏はそんな本ばかりに当たっている感じなんです。これまでは慎重に吟味をしてから買っていたせいかあまり本選びを失敗することがなかっただけに、最近の失敗続きに意気消沈です。 

さすがにテイストが合わなかった残念本をここに列記するわけにはいきませんが、期待して読んだ本がつまらないと結構がっかりします。特にその本の前評判が良いとその落差は大きいです。こういった本に当たりがちなのが俗にいう”最新のベストセラー”なので私は相当話題の本でもない限りこの種の本には手を出さないようにしています。本屋に行かずにネットに頼ってばかりだとブックハントの腕がなまるので、今度の休みの日には大きな本屋にでも行ってみようかなと思う今日この頃です。 


人間の感情を徹底的に描いた名著「藤十郎の恋・恩讐の彼方に」 [本]

人間の心を鋭く描く、傑作短編集


藤十郎の恋・恩讐の彼方に (新潮文庫)文豪・菊池寛の初期の時代作品の短編を集めた作品「藤十郎の恋・恩讐の彼方に」を今日はご紹介します。登場する物語の年代はそれぞれで、平安時代から江戸後期までとかなり多岐に及びますが、どの作品にも共通しているのが人間らしい「感情」を鋭く書いているということです。今となっては人間の感情をストレートに扱った時代小説は多々ありますが、それぞれの作品が作られた大正時代~昭和初期には珍しく、人間の感情を人間臭くありのままに描く菊池寛のアプローチが当時はかなり斬新だったようです。

収録されている作品は全部で10作で、表題の2作が特に有名です。「恩讐の彼方に」はかつて教科書にも掲載されていた作品で、仇討ちよりももっと大切なものがあるのではないかという、江戸時代の絶対的概念の否定をした意欲作です。封建的な価値観がまだ幅をきかせていた時代に発表されたこの作品はかなり反発があったんだろうなぁと思わせる作品でもあります。そしてもう一作の「藤十郎の恋」は、人気歌舞伎役者が”道ならぬ恋”に苦しむ役を演じる上で演義に迷い、実際に偽りの恋のゲームを仕掛けてその時の感情の変化を冷めた目で徹底的に観察するという作品です。自分の芸の精進のためにここまで冷徹になれるのかという程の打ち込みようにぞっとします。

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終戦記念日に思いを寄せて [本]

戦争を風化させないために

今日8月15日は日本では終戦記念日です。今から70年前の今日、1945年8月15日、第二次世界大戦が終結しました。この日を迎えるたびに戦争がもたらす悲惨さ、そして癒えることのない傷跡を思い、戦争とは二度と繰り返してはいけないと覚悟を新たにします。

戦争から70年が過ぎると戦後を知る世代が減りその苛烈な記憶の語り部が減っていきます。私を含めて学校の歴史でも世界史先行の場合、縄文時代は勉強しても近現代史を勉強せず何故日本が戦争へと進んだのか、またその後どうやって復興への道のりを歩んできたのかを知らない日本人も多くいるのが現状ではないでしょうか。自国の歴史を知らないというのは恥ずかしいことです。特に海外の人達と仕事を一緒にするようになると、その国と日本の関係、また自国の歴史観が語れずに何度恥ずかしさを感じたか。30歳を越えてから自分の国の歴史を勉強することになるとは思いませんでした。学校教育には受験で必要な歴史の勉強ではなく、大人になっても使える知識を教えるように改善してほしいと切に願うばかります。

今日この日にあわせて半藤一利さんのノンフィクション作品「日本のいちばん長い日」のエントリーを上げる予定でしたがスケジュール調整が上手く出来ずかないませんでした(残念)。この作品は今年同名で映画化されましたね。松本清張、司馬遼太郎らの担当編集者の経験を生かした氏の著作でも教科書には載っていない事実を描いた「ノモンハンの夏」等が有名ですが、やはりこの作品を読んで敗戦という選択肢を選んだ日本の状況を学びたいなと思います。戦争を知らない世代が先の大戦を正しく理解することは平和な日本のために欠かせない要素だと思います。その為にも自分も自分なりに勉強し理解を深めたいと決意する一日になりました。

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

  • 作者: 半藤 一利
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 文庫

自然の素晴らしさに気付きを 「センス・オブ・ワンダー」 [本]

身の回りにある自然の素晴らしさに気付こう


センス・オブ・ワンダー環境問題を世界に提起したレイチェル・カーソンの「沈黙の春」。そんな彼女の最後の作品が今回ご紹介する「センス・オブ・ワンダー」です。農薬による化学汚染と環境破壊を訴えた「沈黙の春」とは180度違い、この「センス・オブ・ワンダー」では、自然にあふれている素晴らしさに気が付くことにより日々の生活がより素晴らしいものになる、というとてもポジティブなテーマを扱った素晴らしい一冊です。出版されたのは彼女の死後で、彼女の友人達が彼女の意思を引き継いで出版した作品で、本の中には彼女が描いた自然の美しさがより伝わるよう、彼女がこの本を執筆した別荘があるアメリカ、メイン州の美しい写真が掲載されています。

これからはあらすじを紹介するのですが、こういった本はあらすじを紹介するよりも実際に読んでもらったほうが良いと思うのでぜひ手にとってもらえればと思います。特に海洋学者だった著者の科学者として自然の見方と、子供を見守る一人の女性としての優しい語りがとても印象的です。この本のタイトルにある「センス・オブ・ワンダー」は神秘さや不思議さに目を見張る感性だとし、レイチェルが甥っ子ロジャーと一緒に夜の海で見た荒々しい海の姿、森の中に生きる植物の姿とそれを見たロジャーがレイチェルに見せる「センス・オブ・ワンダー」の素晴らしさ・・・。子供と一緒に世界を見るとより自然美に気が付くことができ、大人になってからでも自分の感性を集中して周囲を探せばそれらが私たちの身の回りのどこにでもあることが分かるとあります。私たちが見過ごしている素敵なものに気が付くことができる「センス・オブ・ワンダー」を持ち続けることができれば、無味乾燥なモノクロの世界に疲れた大人の心の解毒剤になるとも書いていますし、私もその通りだと思います。

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幻想の街々の世界へ 「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ著 [本]

想像力総動員で読む幻の街の物語「見えない都市」


見えない都市 (河出文庫)前回ご紹介した「小説十八史略」の最後はフビライ・ハーンによる元の建国で物語りが終わりました。今日はそのフビライ汗(ハーン)と彼の寵臣マルコ・ポーロの対話による幻想小説の傑作、イタリアのイタロ・カルヴィーノ著「見えない都市」をご紹介します。この小説は統治者でありながら広い領土を自分の足で見て回ることができないフビライ汗の代わりにマルコ・ポーロが領地をめぐり、その様子を報告するという設定になっています。あらすじというものも特にないのですが、簡単にまとめます。

中国を統治した元の国主フビライ・汗(ハーン)は、王朝の絶頂期を迎えているものの自分の目ですべての領土を見ることができない。そこで彼の臣下であり、異国から来たマルコ・ポーロが国内を旅して見て来た街々の様子を報告させる。マルコ・ポーロから話される55の都市はすべてどれも存在しているはずだけれどもフビライ汗にはその存在すら確かめることができない街。そんな見えない都市の話を聞き、フビライ汗は街の様子ではなく、そこに住む人々の生活やその人生を垣間見る。

1つの街の紹介が長くても4ページとかなりコンパクトにまとめられています。55の街は高度な科学技術を持つ近未来都市から巨大都市、空の上や湖の中にある不思議な町に死者に会える街など多種多様な町が登場します。街にも成長途中の街もあれば絶頂期に斜陽の都市、既に滅びの歩みを止めることができない町など「都市の命」もありますし、街の様子を通してそこに住む人々の生活や人生も間接的に一緒に描かれています。幻想小説にふさわしく、読み手の想像力を総動員してイメージを膨らませながら読み進める必要があるのでボルヘス系が好きな人は結構はまると思います。

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世界史受験の学生さん、中国史はこれでOKよ!!「小説十八史略」 [本]

受験生諸君、中国史の前半はこれで攻略すべし!!

私たち日本のお隣の国、中国の歴史を神話の時代からモンゴル王朝「元」の確立、フビライ・ハーンによる統一までを分かりやすく、そして面白くまとめた小説が今回紹介する陳舜臣さんの「小説十八史略」です。大学受験を世界史で受けたはるか昔、中国史を覚えるのに非常に苦労した私は「この本を現役時代に読みたかった~!!」と叫んでしまいました。

小説十八史略.JPG

歴史上外せないポイントをしっかりと押さえつつも小説として読み手が飽きないように程よくフィクションが入れられているので一気に読み進めることができる上に頭にしっかりと残る、なんとも受験生向けの参考書ではありませんか!受験勉強で少し勉強机から離れたいとき、通学の途中にぜひ読んでみてください。ただし6巻ある長編なので、この夏休みに一気に読破し、中国史前半を制覇するのもお勧めです。もちろん中国史が好きな人、興味がある人にも当然お勧めです。ドロドロの権力闘争や皇帝を操る後宮の女たちの壮絶バトルに悲劇のヒーロー、ヒロインなど故事成語やことわざの原点となったエピソードも大量に出てくるので知的好奇心をどこまでも刺激してやみません。

ここからは各巻のあらすじをまとめます。自分が好きな時代があったらそこだけつまみ食いならぬ摘み読みでも良いかもしれませんね。

1巻(神話の時代~始皇帝の秦の確立)
小説十八史略(一) (講談社文庫)世界の成り立ちから月の女神嫦娥(じょうが)がどうして月に住んでいるのか等、神話が最初に登場。その後「封神演義」で有名な殷の紂王が愛妾妲己の色香に惑わされ名君から暴君へと変貌し、太公望をはじめとする後の周王朝により滅ぼされる。中国三大美女西施が登場し、スーパー合理主義&現実主義者の始皇帝が広大な中国を統一し「秦」を作る。過去の失敗から多くを学び、文字や尺度の統一といった政策をすすめ、卓越した政治手腕で徹底した法治国家として国を完全にコントロール下におき成長させる。ただし熱狂的な土木工事マニアで国庫は常にピンチ!!

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世界中で読まれている名作 「沈黙」 [本]

宣教師が問いかける「神の沈黙」とは


沈黙 (新潮文庫)世界中で読まれている日本人作家の本は数多くありますが、遠藤周作の「沈黙」程キリスト教文学として世界中で広く読まれている日本の作品はありません。キリスト教を強く禁止した江戸時代を舞台に、真の信仰とは何かを問いかけたこの本はキリスト教徒以外の人にも広く読まれています。読んだことはないけれども名前は知っているという人も多いと思います。では、有名過ぎる小説ではありますが一応あらすじをご紹介します。

キリシタン弾圧が厳しい江戸時代初期、ポルトガルから2人の宣教師がキリスト教の布教と音信不通の宣教師達の状況を調べる為に日本に密入国をする。その一人ロドリゴは隠れキリシタンの村に匿われながら、迫害と圧力に耐えながら必死に信仰を守る日本の信徒の姿に感銘を受ける。その後心の弱い信者の一人キチジローの裏切りによって役人に捕えられたロドリゴは信仰を守るために強烈な拷問に苦しみ息絶えていく信徒立の姿を目の当たりにし、神の存在と自らのこれまでの行いに疑問を抱く様になる。自分を役人に売り飛ばしながらも許しを求めて何度も姿を現すキチジローや信仰を守るために死を選ぶ百姓達の苦しみ。悲しみと苦しみの果てにロドリゴが最後に見い出した真の信仰とは何か。

この小説、キリスト教の本と言うよりも「自分が自分らしく生きる為の心の支えは何か」ということを書いています。当然主人公の宣教師ロドリゴにとってはそれはキリスト教への信仰心であり、神の存在ですが、特定の信仰を持たない人にも「自分が自分らしく生きる為の心の支え」は必ずあるはずです。もちろんそれが何かを分かっている人もいれば、未だ分からないという人もいると思います。「夜と霧」で第二次世界大戦中の壮絶な強制収容所での経験を書いたフランクルは著書「それでも人生にイエスと言う」でそれは「希望」だと書いていますし、旅行愛好家のバイブル「シャンタラム」では、脱獄、国際指名手配犯の主人公リン・シャンタラムがムンバイでの経験からそれは「(人間)愛」であると書いています。もちろん、友人の存在、家族の存在と言う人もいるのではないでしょうか。

この作品のポイントは2つ。1つは心弱い信者キチジローの存在。2つ目は「神の沈黙」です。1つ目のキチジローとは信仰心を強く持ち司教として気高く生きるロドリゴと対極をなす存在として登場する貧乏百姓です。彼はロドリゴとマカオで出会い、キリスト教徒であことを隠してロドリゴ達と共に日本に密入国(帰国)し、その後もロドリゴの後ろを許しを求めてついていきます。ただし彼は心が弱く、卑屈で信仰心が弱いキリスト教徒であり、踏絵も簡単に踏んでしまうタイプの人間です。そんなキチジローのことをロドリゴは物語の終盤まで魂が卑しいと徹底的に嫌い続けます。作者はこのキチジローに自らの姿を投影したとありますが、このキチジローこそ標準的な人間の代表として作者が本当に描きたかった存在なのではないかと感じています。ロドリゴの様な自分の命と替えてでも信仰を持ち続ける心の強さを持つことが出来る人間はそうは多くありませんし、真に救いを求めている人々こそ、こういった心弱い者であるということですね。最後の最後にロドリゴはあることをきっかけに、一つの真実の前ではロドリゴもキチジローも同じであるという結論に辿りつくことになります。

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セイバーメトリクスで既存の野球をぶち壊せ「マネーボール」 [本]

金がないなら頭を使って勝ち星を取に行く!!


マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)野球というスポーツは運が試合を左右するものか、それとも球団の資金力で試合が決まるのか。現在のアメリカ球界の金満体質に大きな波紋を起こした新しい野球の分析方法「セイバーメトリクス」を生み出したオークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンが弱小チームを強豪チームに育てていくノンフィクション、マイケル・ルイス著「マネーボール」をご紹介しようと思います。ブラッド・ピットが主演した同名の映画の原作でもあります。感嘆にあらすじをどうぞ!!

アメリカ球界の弱小&貧乏チーム「オークランド・アスレチックス」のゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンは独自の分析方法セイバーメトリクスという手法を使ってチームを徐々に強くし、プレーオフに出れるまでの常勝軍団へと導いていく。セイバーメトリクスは古く感覚だけで選手を起用したり採用する方法を完全に否定した出塁率を最上とした分析方法で、多くの関係者を巻き込み、批判に晒されながらもビリーは相棒ポールの叩きだす有望選手達と共に野球界に新しい嵐を巻き起こしていく。

この本を読んで最初に感じたことが、いつでも新しいことを始める先駆者は異端児として倦厭されるということです。斬新なアイデアとそれを実行する決断力。ビリー・ビーンはアメリカ球界のニュータイプのゼネラルマネージャーです。出塁率を何よりも重要と位置付け、ドラフトでもトレードでも四球、ヒットなど塁に出る確率が高く無名の給料が安い選手を集め、選手の成績が最高な時期に高値で他球団にトレードで出す。この効率重視の切り盛り術でビリーは資金が下から数えて2番目の極貧球団をプレーオフに出れるまで成長させることに成功します。

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待望の続編発売決定!!「シャンタラム」 [本]

命ある限り生き続けろ!!不屈の精神炸裂「シャンタラム」


シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)今日はハリウッド映画界からバックパッカーまでを魅了する世界的ベストセラーにして今年待望の続編が発売されることが決まった「シャンタラム」を取り上げたいと思います。日本でも多くのブロガーさんが紹介していて熱狂的なファンも多くいます。主人公リンがインド・ボンベイを拠点にして過ごす4年間の物語は本の裏表紙に「現代の千夜一夜物語」と書かれていますが、私が読んだ印象では「現代版オデュッセイア」の方が近いのではないかと思っています。ただ「オデュッセイア」は主人公オデュッセウスが10年かけて家に帰る物語ですが、リンは過去から逃げる逃亡犯という大きな違いがありますが。では、世紀のベストセラー小説のあらすじをどうぞ!!

銀行強盗の罪で服役中のオーストラリア人リンジーは脱獄し、偽造パスポートで逃亡インドのムンバイに流れ着く。そこで一人の輝かんばかりの笑顔を持つガイド、プラバカルと出会い、彼に導かれるままボンベイのスラムで無免許医師として生活を始める。同時にボンベイのマフィア達と知り合い、多くの人と出会い懐の広いボンベイに溶け込んでいく。しかしボンベイの街では血の組織「サプナ」が人々を恐怖のどん底に落とし、遂にリンも何者かの策略にはまり無実の罪で刑務所に送られる。徹底した拷問に耐え解放されたリンがスラムに戻った時には全てが変わり、更なる過酷な運命がリンを持っていた。

一言でこの小説を表すと、読まないと損する位面白いです。ジェットコースターの様な展開と哲学や人類愛、生きることの意義や愛とは何か、真の幸福とは何かなど色々な人生の要素が全部まとめて入っているので、ただ面白いだけではなく、読み手は色々なことを考えさせられ心を痛めることもありますし、時には涙を流すこともあるでしょう。要するに

超一級のエンターテイメント小説です

主人公リンジー(後のリン)はオーストラリアで強盗の罪で服役していた刑務所から脱獄し、偽装パスポートでインドに流れ着いたとんでもない男です。国を捨て、家族を捨て、友を捨てた逃亡の果てに辿りついたボンベイの街でリンジーは身も心も擦り切れてしまっていた状態だった時にガイドのプラバカルに出会います。この出会いがリンジーの人生を大きく変え、国際指名手配犯リンジーからボンベイの風変りのゴラ(白人)リン・シャンタラムに生まれ変わり、彼の魂は癒されると同時に良い意味でも悪い意味でもボンベイの社会に深くかかわるようになります。時にはスラムの無免許医師として、ボンベイマフィアの一員として、理由も分からないまま刑務所に入れられた囚人として、絶望に打ちひしがれたヘロイン中毒者として、そして理想を求め戦場に向かう戦闘員として・・・。

主人公リンは作者グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツです。彼はリンと同じ経歴を持ち自分の経験をもとに服役した刑務所内でこの小説を書いているのである意味このリン・シャンタラムの人生はドキュメンタリーでもあるわけです。リンが物語の中で自ら語る様に「自由を求め、何事にも縛られず、権力と不条理な運命に屈しない精神」という終始一貫した行動方針で生きるリンの生き様はどこまでも真っ直ぐで熱く、読んでいてどんどん彼が好きになっていくこと間違いなしです。

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何事も自分で決める、選ぶという大切さ「西の魔女が死んだ」 [本]

現代版魔女修行の目的とは?


西の魔女が死んだ (新潮文庫)久々に児童文学に戻ってきました。今日は日本の児童文学作家・梨木香歩さんのベストセラー小説「西の魔女が死んだ」をご紹介したいと思います。書店に行くと必ずと言っていいほどの割合で平置きになって紹介されている大ベストセラーで、Amazonでもレビュー数が300件を超えていることからも多くの人に読まれていることが分かります。先ずは簡単にあらすじをご紹介したいと思います。

中学に進学してすぐにクラスの仲良しグループの付き合い方に嫌気がさした主人公まいは不登校となり、ママを心配させる。ママはまいのぜんそくの治療も兼ねて田舎に住むおばあちゃんの家で過ごしてみることまいに提案、まいはおばあちゃんの家で過ごすことになる。自然に囲まれ、大好きなおばあちゃんと暮らしていくうちに「自分らしく生きる強さ」を学ぶべく、実は魔女だった!?おばあちゃんの指導のもと、まいは立派な魔女になるべく修行を始める。

一番多感な年頃の主人公まいがクラスの「仲良しグループ」ごっこに疲れて学校から遠ざかってしまうということ、不登校になることはなくても同じような経験をしたことがある人は多いのはないでしょうか。大人になってから振り返ると実にばからしいことだけれども、まっただ中にいる時はそれが分からないというのは大人も子供も一緒です。 

自分が苦しい時に自分の傷ついた心を優しく包んで癒してくれる存在となったのが田舎で素敵に暮らすイギリス人のおばあちゃん。そんなおばあちゃんは実は魔女で、まいが修行をすれば魔女になれるかもしれないということで2人で魔女修行が始まります。

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