SSブログ

世界史受験の学生さん、中国史はこれでOKよ!!「小説十八史略」 [本]

受験生諸君、中国史の前半はこれで攻略すべし!!

私たち日本のお隣の国、中国の歴史を神話の時代からモンゴル王朝「元」の確立、フビライ・ハーンによる統一までを分かりやすく、そして面白くまとめた小説が今回紹介する陳舜臣さんの「小説十八史略」です。大学受験を世界史で受けたはるか昔、中国史を覚えるのに非常に苦労した私は「この本を現役時代に読みたかった~!!」と叫んでしまいました。

小説十八史略.JPG

歴史上外せないポイントをしっかりと押さえつつも小説として読み手が飽きないように程よくフィクションが入れられているので一気に読み進めることができる上に頭にしっかりと残る、なんとも受験生向けの参考書ではありませんか!受験勉強で少し勉強机から離れたいとき、通学の途中にぜひ読んでみてください。ただし6巻ある長編なので、この夏休みに一気に読破し、中国史前半を制覇するのもお勧めです。もちろん中国史が好きな人、興味がある人にも当然お勧めです。ドロドロの権力闘争や皇帝を操る後宮の女たちの壮絶バトルに悲劇のヒーロー、ヒロインなど故事成語やことわざの原点となったエピソードも大量に出てくるので知的好奇心をどこまでも刺激してやみません。

ここからは各巻のあらすじをまとめます。自分が好きな時代があったらそこだけつまみ食いならぬ摘み読みでも良いかもしれませんね。

1巻(神話の時代~始皇帝の秦の確立)
小説十八史略(一) (講談社文庫)世界の成り立ちから月の女神嫦娥(じょうが)がどうして月に住んでいるのか等、神話が最初に登場。その後「封神演義」で有名な殷の紂王が愛妾妲己の色香に惑わされ名君から暴君へと変貌し、太公望をはじめとする後の周王朝により滅ぼされる。中国三大美女西施が登場し、スーパー合理主義&現実主義者の始皇帝が広大な中国を統一し「秦」を作る。過去の失敗から多くを学び、文字や尺度の統一といった政策をすすめ、卓越した政治手腕で徹底した法治国家として国を完全にコントロール下におき成長させる。ただし熱狂的な土木工事マニアで国庫は常にピンチ!!

2巻(秦後期~漢の創設~武帝の活躍)
小説十八史略(二) (講談社文庫)始皇帝の死後国家は乱れ群雄割拠の時代となるが、項羽と劉邦という2人の英雄が壮絶な戦いを繰り広げ天下を争い後世に残る数々のエピソードを交えつつ劉邦が項羽を下し「漢」を創設。しか~し、劉邦の超悪妻・呂后(マジで怖いです、この方)により建国の功臣は皆殺し&外戚による駄目政治でスタート。お世継ぎを争う壮絶な後宮での女の戦いが繰り広げられ、漢中興の祖武帝が登場。始皇帝バリのスーパー皇帝となる武帝の出現により一気に改革が進み治世55年に及ぶ安定した長期政権になる。武帝も始皇帝と同じ実力主義の現実主義者。前期は側近にも恵まれ国は大発展。後期は独裁者として大暴走!女は怖いということを悟れる貴重な一冊。

3巻(漢中期~三国時代初期)
小説十八史略(三) (講談社文庫)後宮の女の争いに巻き込まれて庶民に格下げされた庶民育ちの皇帝宣帝が政変により即位。リアリストの宣帝は礼節命の儒教が大嫌いで武帝路線で漢は好調をキープ。その後一時国は乱れるも王昭君による異民族懐柔、再統一で何とか安定路線に回復。ところが皇帝が変わると国も変わり、あっという間に外戚が実権を握る傀儡政治へと転落し漢王室は完全に形骸化。天下を狙う野心家曹操の登場により、次の時代に向けて歴史が進みだす。儒教って政治の世界は全く使えない思想だわ~と痛感。

4巻(三国時代~隋)
小説十八史略(四) (講談社文庫)漢末期で天下が乱れ、各地で天下統一を狙う英雄たちが立ち上がる。一騎当千の武将呂布、カリスマ指揮官曹操、第三勢力を狙う自称漢王朝末裔劉備と彼の軍師諸葛亮。長江の碧眼児孫権と次代を狙う司馬懿等のまさに「三国志演義」の世界。「三国志」好きにはこの一冊だけでもOK!魏をクーデターで滅ぼした司馬家が起こした「晋」が同族争いで滅亡し、隋に統一されるまでが描かれる。この隋の時代に推古天皇の使者・小野妹子が遣隋使として登場!ようやく日本(倭)の登場で中国の歴史の長さを改めて実感。そして孔明の昼夜を問わない猛烈仕事人間っぷりに世界で最初の過労死と勝手に認定。

5巻(隋滅亡~唐の滅亡)
小説十八史略(五) (講談社文庫)衰退した隋を李世民率いる唐が継承。李世民(太祖)の治世は「貞観の治」と言われ中国史上最上の時代を迎える。時代のアイドル三蔵法師も登場し西域行きを渋る太祖を無視して無許可で西域に勝手に出奔(汗)。そして日本では則天武后の名で有名な女帝則武天が君臨。美・知性・頭の良さ・残忍さで勝手に皇帝になって「周」を建国。中国史上唯一の女性皇帝は呂后に負けない叩き上げのキャリアウーマンで、かなりの政治手腕があったのがこれまたご立派。民間から進士を登用し実力重視のブレーンを作るなど政治家としての力量はかなりのもの。則武天亡き後は玄宗皇帝の時代に移行。前半は則武天が発掘した敏腕進士を側近として重用し善政を敷くも後半は楊貴妃の色香に迷って唐は滅亡。この5巻は後宮に生きる女性がいかに表の政治の世界を動かしていたかが分かる一冊。タイプの異なる魅力的な悪女が数多く登場するので、裏切り、毒殺、暗殺が日常茶飯事の華やかで個人的結構お気に入りの一冊。

6巻(唐の終焉~宋~元の成立)
小説十八史略(六) (講談社文庫)玄宗亡き後宦官政治で乱れた世を趙匡胤がまとめて宋を建国。武家出身ながら文治政治を徹底し進士を重用したことから民が安心して生活できる時代が到来する。しかしながら周辺諸国の遼、西夏、金との戦いと国内の新旧派閥による争いで国力はジリ貧状態。そこに芸術大好き皇帝徽宗の即位で事実上の国の滅亡向かえる。戦場では国家の英雄・岳飛が活躍するも現実路線&鉄の意志を持つ宰相秦檜によって無実の罪で処刑。荒れた時代にモンゴル族の英雄チンギス・ハーンが綺羅星の如く登場し、圧倒的な戦力で領土を拡大していく。最後はフビライ・ハーンによってモンゴル国家「元」が誕生する。

いかがでしたでしょうか。かなりコンパクトに歴史が学べる小説です。難しくなりがちな歴史小説を非常に読みやすい文章&描写で描いた小説はまさに受験生必読書です。中国の長い歴史を通じていかにあの広い国土をまとめるのが大変かということを感じさせます。これまで知らなかったエピソードや人物を知ることになり、お気に入りの皇帝や英雄を探してみるのも面白いと思います。私はこのシリーズを読んで秦の始皇帝のイメージが180度変わりました。残忍なイメージから偉大なる皇帝に変身です!!皆さんもぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。お勧めです。

小説十八史略 文庫 全6巻 完結セット (講談社文庫―中国歴史シリーズ)

小説十八史略 文庫 全6巻 完結セット (講談社文庫―中国歴史シリーズ)

  • 作者: 陳 舜臣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/05/29
  • メディア: 文庫

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。