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インド神話とジブリの素敵な関係 [本]

アジアの神話も読んでみると面白い!! 


ラーマーヤナ―インド古典物語 (上) (レグルス文庫 (1))神話と言えばギリシア神話やローマ神話、そして旧約聖書などをイメージする人が多いと思いますが、現代の私達の生活に大きな影響を与えている神話の一つとしてインド神話を忘れてはいけません。なぜならインド神話は仏教に取り込まれ、中国を通って日本に渡り、その影響を現在でも色濃く残っているからです。意外と知られていませんが、ヒンドゥー教では仏教の開祖ゴーダマ・シッダールタ(お釈迦様)は、ヒンドゥー教の神様ヴィシュヌ神の化身といわれています。そんなインド神話の中でも有名なのが二大抒情詩と呼ばれる「マハーバーラタ」と「ラーマヤナ」です。今回は後者の「ラーマヤナ」を取り上げようと思います。

「ラーマヤナ」はラーマ王子が悪の王ラーヴァナと14年に及ぶ戦いを描いた物語で、古代インドでは吟遊詩人が歌い広め、現在でも語り継がれインドでは子供から大人まで皆が知っているお話です(日本で言うところの桃太郎やかぐや姫と同じお伽噺のカテゴリーです)。また「ラーマヤナ」に登場する捕らわれの身となるラーマ王子の妻シータは、強い意志と清い心を持つ素晴らしい女性として描かれ、宮崎駿監督の映画「天空の城ラピュタ」のヒロイン・シータのモデルになっています。では簡単にあらすじを紹介したいと思います。

昔、昔、強い力を持つ悪魔ラーヴァナは神々を支配下におき悪の限りを尽くしていました。それを嘆いたヴィシュヌ神はラーヴァナを倒すために子供を望むコーサラ国の王の子・ラーマ王子として転生することに決めました。時は流れ立派な青年になったラーマ王子はミティラー国の美貌の王女シータと出会い2人は結婚します。ところがある日魔王ラーヴァナがシータの美しさに惹かれ誘拐します。それを知ったラーマ王子はシータを取り戻す為に森に住む猿の一族の王スグリーヴァの力を借り、猿の英雄であるハニューマンをはじめとする猿の軍隊を率いてラーヴァナとの決戦に挑みます・・・。

物語の構成は実に単純明快ですが、子供たちに教訓を教えるという見地からこのお話には神様や魔王ラーヴァナを倒す猿の英雄ハニューマン、そしてラーマ王子も過ちを犯し、それを悔いては強くなるというお話が挿入されています。力に驕る者や優しさが足りない者の末路、そして信頼を裏切る行為に権力への執着心。子供向けでありながらも人として大切なことは何かを上手く伝えています。勿論お伽噺に相応しく男の子にはラーマ王子の”勇気と友情、信頼と誠実さ”を見習い、女の子にはシータの”清純さと優しさ、強い心”を持つように教えています。

また魔王ラーヴァナのサイドも魅力的な登場人物がたくさんいます。特に印象的なのはラーヴァナの子にして悪魔軍最強の戦士インドラジットです。強力な魔法を使うインドラジットは、押し寄せる猿の軍隊を徹底的に壊滅し、戦意喪失を招くほどの強さを発揮します。かつてインドラジットは神々の王であるインドラを倒しただけあり、その勇猛さには猿の勇者ハニューマンも恐れをなすほどで、ラーマ王子たちを最後の最後まで苦しめる憎いラスボスです(その後にラーヴァナがいますが)。

多くのお伽噺がそうであるように、東南アジア諸国では「ラーマヤナ」の物語がベースになった物が多くあり、インテリアや影絵、舞踊、祭事、絵画等多くのジャンルで題材として使われているそうです。私は東南アジアやインドには行ったことがありませんが、寺院や影絵などでは必ずと言っていいほど見ることができるそうです。猿と人間が一緒に描かれているのは、まず「ラーマヤナ」の一場面の可能性が高いそうです。また、「ラーマヤナ」には地名の起源や動物達が持つ特徴の由なども書かれていて、猿の勇者ハニューマンはシータを助ける時に顔をやけどし、顔が黒い猿「ハヌマンラングール」はハニューマンの末裔と言われ寺院で手厚く保護されているなど、トリビアもたくさん挿話されています。

余談ですが現代のインドをはじめとするヒンドゥー教圏では理想的な国王を「ラーマ王子の様」と表現し、見目麗しい女性を「シータの様」と言うそうです。インドの英雄・マハトマ・ガンジーが銃弾に倒れた時の最期の言葉「ヘーラーム(おお神よ)」からも分かる様に”神様=ラーマ”なんですね。この物語に登場する神々は後に仏教に取り込まれ、仏教の世界でもしっかり活躍しています。ハニューマンは仏教の風天になり、ちょい役インドラは帝釈天に、魔族は羅刹に、ラーマを助ける鳥ガルダは迦楼羅天へと転身し日本でも祀られています。身近に感じますよね。

私が持っている本はレグルス文庫から出版されている子供向けの本なので、文字も大きくすべての漢字にルビがふられている読みやすい本です。あらすじを読んで「ん?」と思った人も多いと思いますが、この「ラーマヤナ」の影響を受け猿である孫悟空が大活躍する「西遊記」や「桃太郎」などが出来たという見方もできます。お伽噺はいつでも子供の心を捉えて離さないものですし、話して聞かせるお伽噺のネタ切れの時に「ラーマヤナ」を読んであげるのも良いかもしれません。遥か遠い国の昔話でありながらもアジアに広く伝播され、将来大人になった時に思いだし役立つ機会がくるかもしれませんからね。アジアでも悠久の歴史を持つインドに相応しく、とても興味深い神話の一つです。「ラーマヤナ」と二大抒情詩である「マハーバーラタ」にもいつか挑戦してみたいと思います。

ラーマーヤナ―インド古典物語 (上) (レグルス文庫 (1))

ラーマーヤナ―インド古典物語 (上) (レグルス文庫 (1))

  • 作者: 河田 清史
  • 出版社/メーカー: 第三文明社
  • 発売日: 1971/06
  • メディア: 単行本

ラーマーヤナ―インド古典物語 (下) (レグルス文庫 (2))

ラーマーヤナ―インド古典物語 (下) (レグルス文庫 (2))

  • 作者: 河田 清史
  • 出版社/メーカー: 第三文明社
  • 発売日: 2000
  • メディア: 単行本

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