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フランス革命の端っこをひた走るマダム「紅はこべ」 [本]

愛に燃えて奔走する女活劇物語


べにはこべ (河出文庫)久々のエンターテイメント作のご紹介です。イギリス女流作家バロネス・オルツィのフランス革命を舞台にした「紅はこべ」です。この小説はとにかく何も考えずに主人公のイギリス貴族マルグリート・ブレイクニー夫人の冒険にハラハラドキドキしながら読むのが一番楽しめる大衆文学の傑作です。日本では小説よりも宝塚で有名ですが、海外では映画やテレビドラマにもなっていて小説も大ベストセラーです。では、あらすじをどうぞ!

フランス革命で多くの貴族達が断頭台の前に命を失う中、謎の秘密結社「紅はこべ」による貴族救出作戦により処刑寸前のフランス貴族が救出され、イギリスに渡っていた。斬新なアイデアと奇想天外な方法でフランス貴族達を救出する「紅はこべ」に多くの人の関心が集まる中、元パリの花形女優で今はイギリス人貴族ブレイクニー氏の妻となっている才色兼備で豪胆なマルグリートは、フランス政府が放った「紅はこべ」探索隊の陰謀に巻き込まれたことから謎に満ちた「紅はこべ」を追いかけ、革命の炎燃え上がるフランスへと渡り、秘密の中を華麗に駆け抜けます!

フランス革命を舞台にした恋愛小説と言えば同じく英国が生んだ巨匠チャールズ・ディケンズの「二都物語」が有名ですが、この「紅はこべ」も「二都物語」の影響を受けた作品でありながらも、「二都物語」の暗く悲劇的な要素をバッサリ切り捨てているので、途中登場人物たちの儚い運命に涙することなく、逆に愛に燃えてフランスの街を一人ガンガン突き進むマルグリートの行動力の前に読み手もノリノリ間違いなしです。後半からはマルグリートの頭の中は革命はすっかり消え失せ、愛の為なら命も惜しくないというフランス女全開で愛を求めてひた走る一人の女性の冒険小説状態になってしまうので爽快です。イギリスの貴族ブレイクニー夫人から昔の花形女優に戻った気分で、周りが見えなくなるまで愛を求めてひた走り、大活躍するマルグリートの活躍は、ぜひ女性読者に読んでほしいですね。

マルグリートを窮地に落とす悪玉はフランス政府全権大使のシューブランで、マルグリートとは旧知の仲でありながらも、「紅はこべ」を捕縛するためにマルグリートの兄アルマンの命を交渉材料にしたりと卑劣極まりないかなり悪い敵ですが、どこか抜けていて憎み切れないところがあります。作者もフランス軍人風刺が混じっていて、少し笑いを誘うシーンもあったりします。

女流作家らしいストーリーで物語の展開も早く、「紅はこべ」の正体探しやマルグリートの大活躍と読み応え沢山の内容で誰もが楽しめる一冊だと思います。特に歴史ロマンが好きな女子だったら嫌いな人はいないはず。現在は私が読んだ創元推理文庫版(1970年出版)と川出文庫から出版された2014年出版の2つのタイプが購入可です。川出文庫の翻訳は朝ドラで有名になった村岡花子さんの翻訳になります。村岡版もさらっと読みましたが、女流作家のテキストを上手く雰囲気を残したまま読みやすく翻訳しているのは村岡さんの訳に軍配が上がるかと思います。女性同士の感性の近さでしょうか。表紙も可愛いですしね。何か忘れて激動の時代の愛と冒険物語を読みたい気分になった時にぜひおすすめしたい作品です。勿論正統派ディケンズの「二都物語」には足元にも及びませんが、楽しく読めるエンターテイメント小説として「紅はこべ」おススメです。

べにはこべ (河出文庫)

べにはこべ (河出文庫)

  • 作者: バロネス オルツィ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/09/08
  • メディア: 文庫
二都物語 (新潮文庫)

二都物語 (新潮文庫)

  • 作者: チャールズ ディケンズ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/05/28
  • メディア: 文庫

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