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謎に満ちたアーサー王物語をサトクリフテイストで [本]

読みやすいアーサー王物語


アーサー王と円卓の騎士―サトクリフ・オリジナルイギリスを代表する児童文学作家ローズマリ・サトクリフ。彼女が母国イギリスを代表する物語であるアーサー王にまつわる物語を描いた作品「アーサー王と円卓の騎士」をご紹介します。アーサー王物語と言えば王自身と彼に仕えた立派な騎士達の物語はヨーロッパではロマンチックで騎士道精神を象徴する物語として子供達から大人まで広く読まれています。今回紹介する本は、サトクリフのアーサー王物語3部構成の1作目でアーサーの誕生の秘密から円卓の騎士が全員集まる(アーサー王の最盛期)までのお話が描かれています。

ここで簡単にアーサー王に関して。アーサー王は実在した王様をモデルにした架空の王様と言われています。そのアーサー王に仕えた騎士達が「円卓の騎士」と呼ばれます。後年アーサー王を中心として当時人気のあった騎士達の物語を寄せ集め一つにしたのが現在言われている「アーサー王物語」になります。騎士達の小さな物語がアーサー王という一人の王の下に沢山集められて完成したものなので原本(オリジナル)と言われるものが明確には存在していません。そこに目をつけたサトクリフが自分流の味付けをして新しく作り上げた「アーサー王物語」が本作を含む3部作になっています

前述したとおり、この本にはアーサー王誕生の秘密や円卓の騎士達の数々の冒険譚が各章完結型で描かれています。アーサー王と魔術師マーリンの出会い、どうしてアーサー王の騎士達を「円卓の騎士」と呼ぶようになったのか、トリスタンとイズーの悲しい恋物語に王妃グヴィネヴィアと円卓の騎士筆頭の湖のランスロットの不義の愛などが一つ一つ丁寧に描かれていて、それぞれの物語がお互いに影響を及ぼし合いながら全体の物語が進んでいきます。アーサー王物語というと短編が散らかっていて読みにくい作品ばかりですが、サトクリフによる物語の編集作業を通じて非常にわかりやすくまとまっていますし、騎士達の高潔な魂と生涯たった一人の貴婦人に捧げる愛の深さが物語に花を添えています(ランスロットの場合、愛した女性が王妃だったばかりに全てがおかしくなってしまいますが)。

3部作の1作目にに当たる本作では円卓の騎士が全員揃い、これから始まる「聖杯探索」への序章で終わります。後日聖杯を見つける3人の一人パーシヴァルが円卓の騎士となり、もう一人であるガラハッドの誕生が描かれて終了しています。これから始まる壮大な聖杯探検(パーシヴァルやガラハッドが大活躍する「アーサー王と聖杯の物語」)や円卓の騎士を2分しアーサー王と戦うこととなるランスロットの悲しい運命とアーサー王の死(「アーサー王最後の戦い」)へと物語は進んでいきます。「アーサー王と円卓の騎士」を読んでこのままいけそうだなと思ったら残りの2冊にぜひチャレンジしてください。このアーサー王の物語は今の時代でも多くの作品に影響を残しているので「オデュッセイア」同様教養として知っておくだけでも十分価値があります。

1つだけ問題点を上げるとすると日本語がおかしなところがあることでしょうか。Amazonのレビューでもあった様に途中で登場人物の名前が変わったり、英語をどんな風に訳したのかおかしな日本語が出てきます。私は英語の原作を読んでいないので違和感を感じる程度でしたが、サトクリフの作品は既にリリースされている翻訳本が素晴らしい作品が多いだけに残念です。でも私には十分でした。「アーサー王と円卓の騎士」、おススメです!

アーサー王と円卓の騎士―サトクリフ・オリジナル

アーサー王と円卓の騎士―サトクリフ・オリジナル

  • 作者: ローズマリ サトクリフ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 単行本
アーサー王と聖杯の物語―サトクリフ・オリジナル〈2〉 (サトクリフ・オリジナル (2))

アーサー王と聖杯の物語―サトクリフ・オリジナル〈2〉 (サトクリフ・オリジナル (2))

  • 作者: ローズマリ サトクリフ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2001/03
  • メディア: 単行本

アーサー王最後の戦い―サトクリフ・オリジナル〈3〉 (サトクリフ・オリジナル (3))

アーサー王最後の戦い―サトクリフ・オリジナル〈3〉 (サトクリフ・オリジナル (3))

  • 作者: ローズマリ サトクリフ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2001/04
  • メディア: 単行本

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