偉大なるジャズマン、アート・ブレイキー 「Moanin」 [音楽]
アート・ブレイキーの名盤「Moanin」
この頃Jazzばかりの音楽生活をおくっている私ですが、最近ようやくジャズとは何かが分かってきました。もちろんこれまでもジャズは好きで聞いていましたが、なんと表現すれば良いか迷うところですが、これまで曲として聞いていたものが”この演奏はここが凄いな”と「ジャズを感じる」ことが出来るようになってきたようです。以前紹介したジャズの入門書であり、素晴らしい手引書である後藤雅洋氏の名著「一生モノのジャズ名盤500」に書いてある、「ジャズ耳」というのが私にも出来上がってきたのかな、なんて自惚れていたりします。とは言ってもまだまだジャズ初心者マークなんですがね（笑）。
色々なジャズのCDを聞いていくうちに、ジャズの世界において偉大な功績を遺した御大Art Brakey（アート・ブレイキー）の作品にはまっています。これまではあまり積極的に聞くことはなかったのですが、音楽に対する熱さとでもいうのか、気合と真剣さを音を通してヒシヒシと感じるんです!!特に彼が率いたバンド”ジャズ・メッセンジャーズ”の名盤中の名盤「Moanin（モーニン）」は凄いの一言。もちろん「バードランドの夜」も素晴らしいのですが、先に聞いた作品が「Moanin」なのでその分思い入れが深いんです。タイトル曲である「Moanin」は名前は知らなくても誰もが知っている曲です。まずはYouTubeでどうぞ!!
どうでしょうか、皆さんもご存知の曲でしたでしょ？冒頭のピアノから既に雰囲気満点で、そこからテナー・サックス、トランペットのソロへと続き全体が熱気ムンムンなんですが、むさ苦しい感じではなく洗練さもしっかりある”クール＆ホット”な演奏なんですよ。そこが凄い。これだけ熱いとクラクラするんですが、テナー・サックスのBenny Golson（ベニー・ゴルソン）の熱帯夜顔負けのべとつくような暑さ、トランペットのLee Morgan（リー・モーガン）の夏の日差しの様な熱気、そしてピアノのBobby Timmons（ボビー・ティモンズ）のタメを利かせた小粋な演奏が空間を完璧に造り上げているのをヒシヒシと感じます。もちろん全てを支える音楽隊があっての演奏ですね。ドラムスとしてチームをコントロールするブレイキーの演奏も控えめながらしっかり効いています。
勿論アルバムの1曲目だけが素晴らしいのではなく、収録曲6曲ともバリエーション豊かで聞きごたえ満点です。4曲目の「The Drum Thunder Suite」はアート・ブレイキーのドラムを聞く為の曲で御大のドラムプレイが最高です。とにかく格好良いです。
よくこのアルバムを評して「ファンキー・ジャズの決定版」という表現があります。ファンキー・ジャズとは高い演奏技術が求められるアドリブを入れ込み、しっかりと音楽性を持った「ハード・バップ」の中の一つのジャンルですが、このアルバムはファンキー・ジャズの決定版だけに留まらずハード・バップの決定版でもあります。実際のところハード・バップというジャンルを作ったのもアート・ブレイキー御大なので、ある意味当然ですね（苦笑）。ジャズの世界は本当に深いです。まさに”深淵”。この作品以降も、御大は常に時代の一歩先行くジャズマンとして活躍されます。「チュニジアの夜」が特に有名でしょうか。そして御大のもう一つの才能が、若いジャズマンの才能を見つけ伸ばすという後進の育成があります。メッセンジャーズ出身のジャズマンとしては、前回取り上げたウェイン・ショーターやキース・ジャレットなど、後にモダンジャズと言われるジャンルが出来た際に活躍することになるメンバーは御大の影響が非常に強いです。
私自身が、こう”熱い音楽”の虜になるとは思っていなかっただけに、ジャズという音楽が持つ魅力（既に魔力？）にスッカリはまってしまって怖いくらいです。ここ数か月これまで聞く頻度が低かったジャズのCDを週末にゆっくり聞いているのですが、そこで新しい発見を数多くすることが出来てとても楽しいです。Jazzの世界に入った頃は身近な楽器であるピアノがメインで、Bill Evans（ビル・エバンス）やSonny Clark（ソニー・クラーク）の作品や演奏ばかりを聞いていましたが、繊細な感性の音楽一辺倒だった私のジャズの世界を一気に広めてくれた後藤雅洋氏の本にも感謝です。
「Moanin」に関しては当然ハズレ曲一切なしの神CDなので、とにかくジャズという世界に少しでも興味を持った人は必ず買いましょう（断言）。そしてこのアルバムが持つ抒情が分かるようになれば、ジャズの世界のドップリ嵌れる素質抜群です。ようこそジャズのめくるめく世界へ。そして一緒にジャズの世界で迷子になりましょう（笑）。とにかく最強にして最高の1枚です。
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Blue Note Records
- 発売日: 1999/03/17
- メディア: CD
- 作者: 後藤 雅洋
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/08/02
- メディア: 新書
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