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全人類の宝物-大英博物館(その2) [渡英準備]

疑惑の彫刻「エルギン・マーブルズ」
 
大英博物館シリーズ2回目は、ギリシア・アテネのアクロポリスの丘にある、パルテノン神殿の彫刻群「エルギン・マーブルズ」です。エルギン・マーブルズは、神々を刻んだ彫刻からレリーフまで、膨大な量があり、大英博物館の中でもとても人気のあるブースです。むむ?どうして、ギリシアの国宝ともいえるパルテノン神殿の彫刻群が遥か北海を超えたイギリスにあるのでしょうか?この美しい彫刻群にも、美しすぎるが故の悲しい運命が待ち受けていたのです・・・。
 
 
 
 
今から200年以上前、オスマントルコに駐英国大使として赴任した、エルギン卿(Lord Elgin)は、ギリシア(当時はオスマン帝国の支配下)のパルテノン神殿の美しさに魅了され、イギリスにある自宅の庭園に飾るべく、あらゆる手段を講じ、半ば強奪に近い形で彫刻を剥ぎ取り、イギリスへと運んでしまったのです。その後コレクションは大英博物館へと売却され、疑惑の「エルギン・マーブルズ」として、現在に至るまでギリシアとの返還問題で揺れているのです。2004年のアテネオリンピック開催時に、にわかに返還問題が盛り上がっていたことをご記憶の方もいるのではないでしょうか。現在、大英博物館の公式見解は「返還後の保管状況の悪化」を理由にし、返還要請を突っぱねている状況です。
 
 賑わう回廊
 
この彫刻群の運命に思いを馳せ、実物を目にすると、不謹慎ですがエルギン卿の気持ちも良く分かります。それぞれが個別で展示されているだけでも、その美しさにため息が出るのに、それが神殿の中でまとまって飾られていたら、ギリシア美術愛好家の卿の心の箍が外れてしまったのでしょう・・・。ですが、彫刻を見て感じたことは、「この彫刻はここにあっても、その真の美しさは永遠に見ることは無いんだろうな」ということ。残念ながら私の目には、彫刻が半分死んでいるように感じたのです。実質、パルテノン神殿の魂は2分割されてしまっていると言っても過言ではないのかもしれませんね・・・。
 
 躍動感が感じられます
 
将来、この彫刻群がパルテノン神殿に戻り、光り輝く姿を取り戻す日は来るのでしょうか?返還問題に関しては、今後どのような変遷をたどっていくのか注意深く見ていきたいと思います。
 
 
万物に共通し、「美」は人々の心を魅了し、狂わせます。美しいがゆえの悲しい運命。一つの美術品にも多くの歴史があります。ぜひ、歴史ある芸術作品に触れる時は、その作品がたどってきた数奇な運命にも、思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

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コメント 4

うぃん

僕と同じ人間の作った作品とは思えないですねー(笑
実際にみると、迫力があるのでしょうねー^^

返還問題・・・円満に解決すると良いですね。
芸術は国の歴史ですからね。
by うぃん (2006-07-24 01:45) 

as

>うぃんさん、ようこそ!同じ人間、しかも紀元前に作られた物なんですよ。本当に凄いことですよね。写真ではよく伝わらないと思うのですが、かなりの大きさがあるもので、当時はパルテノン神殿のファッサード(入り口)を絢爛に飾っていたことでしょう。今では、その姿も見ることが出来ないのが残念です。

返還問題に関しては、一概に返せば良いというわけにはいかないのも事実。この彫刻を、雨ざらしにするのは絶対に出来ませんよね。非常に難しい問題です。
by as (2006-07-24 11:31) 

akoustam

こういうパルテノン彫刻のような例があるので、旅行好きの間では「大英“盗品”博物館」と揶揄されることが多い(^^;)ここですが、僕は行ったことないんですよね。ルーブルも行ったこと無いし(ヴァチカンとかプラドとかウフィッツィは行きました)。

かといって返還すりゃいいかっていうと、パルテノン神殿のあの惨状(歴史の重みなど全く感じられない無粋な工事現場)を見る限り、返してもろくな末路を辿らないような気もするので、ここにあるのも悪くないかなとか考えます。
by akoustam (2006-07-25 11:31) 

as

>akoustamさん、ようこそ!大英博物館の収蔵品を元の国に返還したら、あの博物館は確実に空っぽになってしまいます・・・。この返還問題、本当に複雑ですね。古典芸術の最高峰博物館も、最近では赤字続きで、いつか一部有料公開になるのでは、という不安の声もあがっているので、ぜひ、無料公開中に人類の秘宝に会いに行ってください!
by as (2006-07-25 22:32) 

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