SSブログ

これぞ騎士道ロマンスの金字塔 スコット「アイヴァンホー」 [本]

恋と冒険と騎士道精神炸裂の古典傑作


アイヴァンホー〈上〉 (岩波文庫)騎士というと愛する女性を守り、名誉をかけ、弱気を助ける戦いに身を置き大冒険に生きる騎士道精神を持った勇敢な人達のことを指し、ヨーロッパでは長い歴史の中で重要な役割を果たしました。今回はそんな騎士道に生きる一人の騎士アイヴァンホーを主人公とした歴史冒険活劇ロマンス、イギリスのウォルター・スコット著「アイヴァンホー」をご紹介したいと思います。文学史の世界でも史実と物語を混ぜ合わせた小説として記念すべき第一号で新たなジャンルを作り出した作品として非常に重要です。この本は長く絶版になっていましたが、昨年岩波書店が復刻し書店で購入できるようになったと知った時にすぐに購入しました。早速あらすじをどうぞ!

イギリスを征服したノルマン人と征服されたサクソン人がお互いを嫌悪し合う中世イングランド。サクソン人の王の血を引くロウィーナ姫を愛するサクソン人の騎士アイヴァンホーは時の国王師子王リチャードと共に十字軍に遠征から無事に帰国をするも、ノルマン人のリチャードに仕えるアイヴァンホーを許せない誇り高いアイヴァンホーの父セドリックにより勘当されているために城に帰ることが出来ない。せめてロウィーナを一目見ようとアイヴァンホーは闘技会に参加するも負傷する。怪我をした彼はユダヤの美しい娘レベッカによって命を助けられる。この縁がきっかけとなり、王位簒奪を狙うリチャードの弟ジョンとその部下やシャーウッドの森に住む盗賊達を巻き込み、イギリスから悪を追い払う為の大きな作戦が展開されていく。

books.JPG
重版された帯がどどーんとかかっています。

物語の主人公はアイヴァンホーなんですが、主人公は物語の大半で負傷し戦線離脱をしています。そんなアイヴァンホーを助けるのが当時激しい迫害をされていたユダヤ娘のレベッカですが、この物語のヒロインであるロウィーナ姫を越える登場時間と素晴らしい人間性と勇敢な行動で彼女が真のヒロインとなっています。そんなレベッカに一目惚れしするのが「御堂の騎士」と呼ばれる神に仕える騎士ド・ボア・ギルベールです。で、この方が物語の悪玉ですが、出家した身にも関わらず悪さし放題で、最後は許されない恋と分かっていながらレベッカを誘拐、監禁など派手に暴れてくれますが、実はこの物語はレベッカを一途に愛する悪の親分ギルベールの純愛物語だったりもします。

ストーリーは名誉を守る為の騎士達の試合や人質を救うために地元のゴロツキ達と騎士様が協力をしてノルマン人が占拠する城を攻め落としたりとかなり派手なイベントの連続です。しかも何でもありのストーリー展開で水戸黄門の様なお気楽リチャード王の活躍(アイヴァンホーはこの人に仕えて気苦労が絶えない)に、シャーウッドの英雄ロビン・フッドが突然乱入してきたりもします。

物語の中にはユダヤ人に対する非常な差別意識やイギリス国王のリチャードが十字軍に参加している理由やノルマン人とサクソン人の対立関係など歴史的背景が分からないと理解できない部分もありますが、一度読んでしまうと分かる仕組みになっているので、まずは冒険活劇を純粋に楽しんで、続けて2ターン目で内容を理解するという読み方をすることをお勧めします。日本で言うところの戦国時代のような群雄割拠の時代ということですね。物語の最後は「勇敢なイングランドの師子王リチャードのもと、ノルマン人もサクソン人も仲良くなり、今日のイギリスが出来上がりました」と一件落着です。

物語はかなり破天荒で楽しいですが、この小説の中では中世のヨーロッパの騎士道に関してその精神性や行動倫理、騎士同士の戦いのルールなど騎士道精神が細かく書かれています。主人公のアイヴァンホーも騎士ですし、彼を助ける謎の黒騎士も無敵&立派な騎士道精神の持ち主です。また、悪役も信念に揺るぎない騎士です。弱きを助け強きを挫く、まさにそんなヨーロッパの中世に活躍した騎士達の物語のエッセンスをギュッと凝縮したような作品でもあるので、騎士道に興味がある人は一度読んでみると色々な発見があって面白いと思います。一大ロマン活劇、お好きな人は是非お試しください。おすすめです。

アイヴァンホー〈上〉 (岩波文庫)

アイヴァンホー〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: ウォルター スコット
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1964/02/16
  • メディア: 文庫

 
アイヴァンホー〈下〉 (岩波文庫 32-219-2)

アイヴァンホー〈下〉 (岩波文庫 32-219-2)

  • 作者: ウォルター スコット
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1974/10/16
  • メディア: 文庫

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。