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いつだって元気になれる本 「あしながおじさん」 [本]

素敵な”あしながおじさん”の正体は誰!?


あしながおじさん (新潮文庫)今回はアメリカの女性作家ジーン・ウェブスターの超有名作「あしながおじさん」を取り上げたいと思います。もともとは児童書として書かれた作品ですが、子供のみならず幅広い年齢層に生きる元気と希望を与えてくれる素晴らしい作品で、私も大好きな一冊です。この小説は孤児院育ちの主人公ジルージャが大学に行く資金を提供してもらかわりに大学生活の様子を支援者に毎月送る手紙をまとめた書簡体の小説で、少し影のある設定ならがもジルージャ持前のユーモアと明るさで読む人の心にいつでも元気をくれる傑作でもあります。現在日本で広く使われている孤児への支援者を”あしながおじさん”と呼ぶきっかけとなった作品でもあることで有名ですね。では早速あらすじを。

ジョン・グリア孤児院で育った快活な17才の少女ジルージャ・アボットは、ある日作家を目指すことと月に一度学校生活を手紙で報告することを条件に大学進学と在学中の学費と生活費の支援を孤児院の評議員である匿名の紳士から受けることになる。ジルージャは孤児院という閉鎖された環境から大学という新しい世界に飛び出し、そこで経験する新しい環境で過ごす毎日の出来事や友人達との日々、学校のイベント等を面白おかしく手紙で報告し、決して返信が来なくても”あしながおじさん”にたった一人の親戚の様な親しみと感謝を感じながら学業に専念する。孤児院育ちの惨めなジルージャは大学生活で教養と普通の暮らしを知り、小説家への道も順調に素敵なレディ・ジュディへと変身していく。そして親切な”あしながおじさん”の正体も誰なのか、こちらも気になるとこで・・・。 

ジュディが書く挿絵入りのは、手紙から孤児院育ちのジルージャが同室で生涯の親友になる田舎の令嬢サリー・マクブライドや名門家のジュリア・ペンデルトンらと生活を共にし、勉学に励む様子が活き活きとした日々が伝わってきます。私も女子校出身なので凄く親しみがわき、自分の学生生活を読んでいるような気分になります(笑)。また休暇にはサリーの家庭に招待されて、生まれて初めて”普通の家庭”を知り、サリーの兄で名門大学生のジミー・マクブライドやジュリアの叔父ジャービス・ペンデルトンとも知り合いになり、ジュディの明朗さと快活な性格で新しい世界で日々成長していく姿が活き活きと語られていて行きます。ニューヨークの街並みに衝撃を受けたり、ジミーの正体で華やかな社交の場に美しく着飾りデビューしたりと一人の女性としても喜びと楽しみを知ります。一方で孤児院では学ぶことが出来なかった一般的な常識も一生懸命勉強するジュディの積極性と、それを苦に感じていない前向きな性格もこの小説の大きな魅力です。

孤児院の評議員である”あしながおじさん”に堂々と孤児院には戻りたくない等、ストレートな言葉を使ってくるジュディは自分がとても恵まれていることを自覚しており、不遇な人生を送るはずだった自分に救いの手を差し伸べてくれた”あしながおじさん”に感謝しながらも、必要以上の支援は受けないという気概もあり、自分で奨学金制度に応募して見事に勝ち取ったものの、「辞退するように」と言ってきた”あしながおじさん”の要求を断固拒否するなど、芯の強さも兼ね備えていて読んでいてスッとします。自分の小説が出版社に売れた時にはそのお金を小切手で”あしながおじさん”に返済として送ったりもしています。勿論孤児院時代の出来事で好きではなかったこともそのまま伝えています。

この本で登場するジュディの生涯の親友となる良家の令嬢サリー・マクブライトはとても重要人物で、この小説の続編「続・あしながおじさん」でジュディが育ったジョン・グリア孤児院の院長となり、持前の手腕で孤児院を改革していきます。ジュディも素敵なレディですが、私は続編を読んでからは”只者ではない”サリー嬢の方が好きになりました(笑)。こちらのお話はまた今度。

さて、ジュディに大学で勉強する機会を与えた”あしながおじさん”の気になる正体は誰なのか気になりますよね。大学に行かせてくれる親切な紳士”あしながおじさん”は、ジョン・グリア孤児院の評議員の一人で、この名称は後ろ姿をちらりと見た時の印象”背が高く、足が長い後ろ姿”から、ジュディが命名した呼び名です。大学進学条件の手紙の差出人はジョン・スミス(日本で言うところの山田太郎)宛であり、送り先も秘書宛て、しかも決してジュディの手紙に返信はなく、さすがのジュディも自分の手紙には目も通していないだろうと思い始めた頃に、風邪で寝込んだと書くと綺麗なバラの花束がお見舞いで送られてきたりと、”あしながおじさん”は正体こそ明かさないものの非常に愛情あふれる紳士であることが分かったりします。

この小説の楽しみ方は3つあると思います。1つ目はジュディと一緒に学生生活を楽しむこと。2つ目は”あしながおじさん”になったつもりでジュディの手紙を読むこと。そして3つ目は”あしながおじさんの正体である人物”になって読むことです。実は3つ目の楽しみ方が一番楽しいのではないかと思います。”あしながおじさんの”の心労が分かるというものです。ジミーの名前ばかり出てくる時は結構凹んだと思います(苦笑)。それとは別に、ジュディが毎日読書にいそしむことから多くの著名作品、とくに名作がたくさん登場するので、どんな本を読んでいるのかを知る楽しみもあります。これは著者ウェブスターが叔父にマーク・トウェインを持ち、父は出版社勤務で自身も才女だったことからも文学に対する愛情が作品の中に現れているのではないでしょうか。

若干ネタバレになってしまいますが、この小説は”ハッピーエンド”が待っている素敵なラブストーリの側面もあります。不幸な境遇から決して諦めることなく、陽気に朗らかでユーモアと根性で苦境を乗り越えていくジュディの物語は誰が読んでも幸せな気分になれます。凄く素敵な物語なので未読の方には是非お勧めしたいと思います。”人生ってそんなに悪いものじゃないな”と思える魔法がかかった素敵な名作をご堪能あれ。

あしながおじさん (新潮文庫)

あしながおじさん (新潮文庫)

  • 作者: ジーン ウェブスター
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1954/12/28
  • メディア: 文庫
 

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