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ビジネス書としても脚光を浴びる兵法書「孫子」 [本]

非戦主義の兵法書「孫子」 

新訂 孫子 (岩波文庫)書店のビジネス書コーナーで、よく「孫子」を解説したマーケティングの本などを多く見かけ、最近ビジネス書として再注目を集めているようですが、「孫子」というと誰もが知っている兵法書。しかしながら近年経済界の著名な経営者の愛読書に「孫子」の名前があげられていることも多く、現代ではビジネスは戦争なんだな、なんて変に納得してしまいます。著名な兵法書と言えば”東は孫武の「孫子」””西はクラウゼヴィッツの「戦争論」”ですね。今日はその「孫子」を取り上げます。

「孫子」は中国の春秋時代に活躍した孫武(BC535年生まれ没年不詳)によって書かれた本で、戦争とはどういうものであるか、勝つためにはどうしたら良いか等々13編にまとめられたコンパクトな本です。しかしながら、兵法書でありながらも

「孫子」の重要な主張は「非戦主義」

冒頭には、”戦争は国の大事、国民の生き死にがかかり、国家の存亡がかかるので、熟慮に熟慮を重ねなければならない”と書かれています。要するに、戦争における最上の策は”戦わずして勝つ”ということ、そして”相手を降伏させることを上とし、敵味方関係なく多くの犠牲者が出る城攻めを下策”としています。

より具体的な中身は、

先ずは戦争の準備から始まり、用兵術、戦場における陣営の使い方、適任者の選出方法に勝負を仕掛けるタイミング、火計に間諜(スパイ)による情報操作に、情報収集の重要性が順を追って書かれています。特に第四編に出てくる戦争の原則として5つの最重要事項としてあげているのが

1、”度”-戦場の広さや距離を正確に測ること
2、”量”-”度”の結果から投入する物資、武器を決めること
3、”数”-”量”の結果から動員する人員(兵数)を決めること
4、”称”-”数”の結果から敵味方の能力を見極めること
5、”勝”-”称”の結果から勝敗を分析し勝算を熟慮すること

とあります。勿論この他にも重要なことが数多く書かれています。しかしながら最終的には戦争は情報戦が勝敗を決めると言っても過言ではない程”情報の有益性”を説いています。具体的な行動規範を説いている第四篇「形篇」は視点を変えると、ビジネスでも十分に活用できる要素が多く含まれています。

この「孫子」は中国から日本に渡り、日本でも広く読まれている書物の一つで、中国では三国時代の曹操が「孫子」に独自の注釈をつける程愛読し、今でも圧倒的な人気がある諸葛孔明も読んでいますし、日本では戦術家として名を馳せた竹中半兵衛も「孫子」を読んでいます。

そんな中でも一番有名なのは文中に出てくる言葉を軍旗に採用したのが武田信玄ですね。そう「風林火山」です!!だた、よーく「孫子」の該当文を読んでみると”侵略することは火の如く、知り難きことは陰の如く、動かざることは山の如く・・・”とあり、「風林火山」ではなく「風林火陰山」となるのでは??なんて突っ込みを入れたくなりますが、やはりここは四文字熟語として立派に確立しているこの言葉にケチをつれるのは良くないですね(笑)。近世では毛沢東も「孫子」を愛読していたことが知られていますし、「呉越同舟」という熟語もここから来ていて、今でも兵法書の頂点として燦然と輝きを放っています。

私が持っている「孫子」は岩波文庫ですが、初めて「孫子」を買おうと検討している方にはこの本をお勧めします。岩波文庫は読みづらいから嫌いという人も多くいるかとは思いますが、理由がいくつかあるので下に簡単にまとめてみますね。

1、冒頭に「孫子」についての歴史的研究が掲載されている
2、原文・読み下し文・現代語訳に注釈があり理解しやすい
3、付録として「史記」の「孫武伝」が掲載されています。これ重要

司馬遷がまとめた「史記」の「孫武伝」には、後宮の女性達も兵士として調練できるかと王に問われた孫武が、寵姫達を一堂に集め調練するも、寵姫達は笑いながら命令を聞かず、ニ度目の命令も無視したために孫武は「軍命に背くものは斬首とする」とし、驚いた王が隊長役の寵姫2人助命をするも孫武は「軍に於いては王命よりも将軍の命令が優先する」と王の前で首を切り、次の命令から女性たちは命令に背くことなく完璧な兵として孫武の命令に従い、孫武は王に「兵の準備が整いました」と報告する逸話が載っています。コワッ!!

BS孫子.jpg

また、最近BS日テレでは中国で放映されたドラマ「孫子兵法」が放映されています。以前チラッと見たのですが、なかなか衣装が綺麗で”ザ・歴史物”って感じでした。ちょっとCGのクオリティが低いのが残念でしたが・・・。主人公孫武の生涯を史実に脚色を加えながら描いたドラマとして評価が高いドラマだそうです。興味のある方はそちらも見てみてはどうでしょうか?確か放映は、月・火の午後6時から一時間だったと思います。

新訂 孫子 (岩波文庫)

新訂 孫子 (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/04/14
  • メディア: 文庫

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コメント 2

Tomo

私も岩波文庫版で読み込みました。結構関連するビジネス書とかもあるのですが、ちょっとしっくり来ないものが多い気がしていました。やっぱり原文を読んで、あれこれ考えるのがいいようです。

確か孫武じゃない方の孫子である孫臏の兵法書が発掘されたのですが、こちらはその後どうなったんでしょうね。
by Tomo (2011-12-09 07:17) 

as

>Tomoさん、ようこそ!!原文デビューの私は、折角なので良さそうなビジネス書を2、3冊読んでみようと思っています。この兵法がどうやってビジネスに展開できるのか興味ありますし、自分の仕事に活かせるなら積極的に取り入れたいですからね。

孫臏の兵法書は現在ちくま書房から本が出ていますね。分量も「孫子」より多く、まだ研究途中といった感じでしょうか。Amazonで調べてみたところ、ちくまから本が発行されていました。こちらの研究はもう少し時間が必要そうですね。
by as (2011-12-09 21:05) 

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