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終戦に命を懸けた24時間の実録、「日本のいちばん長い日」 [本]

全ては日本国の為に、この戦争を終わらせる。


決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)1945年8月14日正午から翌15日正午までの24時間の日本政府の実録をまとめた本を今日はご紹介しようと思います。半藤一利著「日本のいちばん長い一日」です。戦後70年の節目を迎えこの夏に映画化された話題の原作でもあります。長引く第二次世界大戦(太平洋戦争)で国も国民も著しく疲弊した戦争末期の実録は、終戦に向けた凄絶な舞台裏の24時間の出来事を1時間毎に赤裸々に描き、戦争は始めることは簡単でも終わらせる方が遥かに難しいということを強烈に読者に叩き込んできます。この本を一言で表現するならば今の時代に生きる全ての日本国民が括目して読むべき一冊です。

阿南惟幾陸相の命を懸けた覚悟、鈴木総理大臣の和平への願いに玉音放送に全力で臨むNHK職員達の行動。そして国と民を思い聖断として終戦を決めた昭和天皇の思いとそれを支える侍従達の献身・・・。終戦に向けた思いがある一方で「国体護持」を合言葉に本土決戦をしてでも戦うことを主張し血気盛ん過ぎるが故に暴走した陸軍兵士達の国を憂う気持ち。それが引き起こした近衛兵の若手将校達による宮城(皇居)占拠によるクーデターと玉音盤奪取にかけた決起。そんな彼らの行動は数日前までは絶対的な正義が時世に見放され、信じていた正義が崩壊する瞬間の残酷さが寂寥感を誘います。

終戦に向けて一番難しい立場だった阿南陸相が「聖断」がなされてからは終戦に向けて全力で取り組み、「沈みゆく小舟(軍隊)を最後の瞬間までばらばらにならないように」心血を注ぐ様は、当時の陸相が彼でなけれ終戦を迎えることが出来なかっただろうし、またプライドの高い”沈みゆく小舟”が時の流れに木っ端みじんとなり、各地で勝手に蜂起し日本は再起不能になっていたってかもしれないことを想像させます。降伏が決まった直後に市ヶ谷の陸軍省で降伏を伝えた時に逸る将校達に向かって「不服のあるものは自分(阿南)の屍を越えてゆけ」と明言した時には彼に宿る忠実な軍人の魂を感じさせましたが、その高尚な軍人魂を以ってしてもクーデターを抑えることが出来ず、阿南陸相は玉音放送前に陸相職を辞任し、敗戦の一切の責任を一人背負って静かに自刃していきます。人徳の将と言われた人が最後に決めた陸相としての己の命の使い道でした。

今この時代にどれぐらいの人が8月15日に皇居がクーデターの舞台となり、侍従や宮相、玉音放送の録音関係者が反逆者達に監禁され玉音盤が盗まれる寸前まで行ったことを知っているのでしょうか。また玉音放送を阻止すべく反乱分子たちが放送局にまで押し寄せ最後の最後まで徹底抗戦を放送で訴えようとしたことを知っているのでしょうか。 やはり私たち日本人は近現代史をしっかりと学ばないといけないと思います。

この1945年の夏、誰かが一人でも欠け、何か一つでも違っていたら今の日本はなかったことでしょう。今の日本はこの時に「終戦」に向けて命を燃やした先人達の努力の成果なのです。アメリカのドラマ「24」の主人公ジャック・バウアーもビックリの国の存亡をかけた、日本国建国以来間違いなく一番長い一日の出来事は次の世代へと伝えられないといけません。この本には玉音放送で流された詔書全文も収録されています。私も初めてこの本で全文を読みましたが、終戦の8月15日に日本の歴史を変えた815文字の詔書の言葉に歴史と平和の重みを改めて心に感じてみて下さい。

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)

  • 作者: 半藤 一利
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 文庫
日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日

日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1995/06/25
  • メディア: Kindle版

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