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ポーのゴシック小説傑作選 「黒猫・アッシャー家の崩壊」 [本]

王道ゴシック小説を満喫、エドガー・アラン・ポー


黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)先日、本屋さんでエドガー・アラン・ポーの傑作集が新しくなっていることに気が付きその場で1冊購入してきました。タイトルは「黒猫・アッシャー家の崩壊」で、ゴシック小説を集めたポーの短編集になります。むむ、ゴシックですって?ゴシック小説好きとしては見逃すわけにはいきません。収録されている作品で実際に読んだことがあったのは「黒猫」と「アッシャー家の崩壊」の2編だけ(タイトルになっている作品だけ)なのでポーを改めて読んでみるのにも最高のテキストです。

ポーといえば、ミステリーや推理小説、ゴシック小説の祖と言われるほどその作品の影響力が大きな作家です。多くの小説家に読まれていて、日本でも探偵ものを確立した江戸川乱歩さんは、彼の名前から自分のペンネームを付けたことが有名ですよね。

基本的にこの短編集に収録されている作品はどれも系統が同じで、

  1. 主人公が麻薬と酒で精神がおかしくなっている時に経験した話
  2. 全部が過去の出来事を振り返る回想譚

というフレームがしっかりとあります。そんな少し普通じゃない環境で語られる物語は超自然現象やサイコスリラーといった要素が上手く入り込み作品が出来上がっていますし、美女が生き返ったりもしちゃいます。「黒猫」や「ライジーア」は美しいものの死を、「赤き死の仮面」などは皮肉に満ちた社会派小説ですが、今日は「落とし穴と振り子」と「アッシャー家の崩壊」を取り上げたいと思います。

「落とし穴と振り子」は視覚からくる情報で徹底した恐怖心をあおる作品です。自分を切り裂こうと少しずつ天井から吊るされた鎌が降りてくる恐怖や、壁が迫ってくる恐ろしさ、異端審問官達による残虐な刑の執行は、とにかく読んでいてハラハラドキドキが止まりません。ラストまで精神が持つか危ないなと不安に感じる頃にしっかりとしたエンディングが待ち受けていて、ポーの作品には珍しい簡潔で分かりやすい物語の終わりが待っています。絶対に諦めない精神的強さを描いた少し毛色の変わった作品です。

「アッシャー家の崩壊」はオペラになったほどヨーロッパで人気が出た作品でポーのサイコスリラー最高傑作です。主人公の友人の繊細な精神世界と彼を救おうと頑張る主人公の姿、すべての秘密が露見した後に超自然的な力によって崩壊するアッシャー家のダイナミックさと、とにかくスケールが大きいです。勿論美女と詩というポーの世界に欠かせない要素もすべて入っています。クライマックスに向けて”扉”が開く瞬間までの、「まさか、そこにいるの!?」というゾクゾク感がたまりません。ポー初心者には「アッシャー家の崩壊」を読んでみることをお勧めします。

全体を通して言えることは、ポーの作品は中毒性が高いということ。読んでいるその世界に引き込まれてしまうので電車の乗り過ごしには要注意です。読んでいて心の奥の深い場所で冷たい汗が流れるのを感じますし、どれも読んでて「ひ~!!」と叫びたくなるようなサイコスリラー感が半端ないです。中には「落とし穴と振り子」のように、読者の精神よりも視覚から恐怖に訴えてくる作品もありますがなかなか心理的な揺さぶりが凄いです。しかも薄気味悪さだけではなく、ポーの作品には必ず美しいもの(美女)や詩を作品の中に取り込んでいるので、作品が持つゴシックの世界観にそういった高尚なものが入り込むことによってより深みを持たせています。

後世に大きな影響を与えたポーですが、実は彼の作品よりも不可思議なのは彼の死の真相です。未だにポーの死に関しては大きな謎があり、彼の死はどんな彼の小説よりも謎が多いのです。40歳そこそこで突然道端で死体となって発見されたポーの短編集。ぜひ秋の夜長に読んでみてはいかがでしょうか。

黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)

黒猫・アッシャー家の崩壊―ポー短編集〈1〉ゴシック編 (新潮文庫)

  • 作者: エドガー・アラン ポー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/03/28
  • メディア: 文庫

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