日本人受け抜群のジャズ・ピアニスト ソニー・クラーク

日本で人気抜群のソニー・クラーク「Cool Struttin」

日本人はピアノが大好き。これは日本のジャズシーンで、ピアノソロやトリオ等のアルバムが他国を圧倒して高い売り上げを誇ることからも分かる傾向だそうです。日本人にとってピアノは非常に身近な楽器ですし、トランペットやサックスフォーン、ベース（コントラバス）があるお家の数より、ピアノがあるというお家の数の方が多いところからも来ていると思います。

そんな独自の傾向を持つ日本のマーケットで抜群の人気を誇る一枚、ジャズピアニストSonny Clark（ソニー・クラーク）の「Cool Struttin（クール・ストラッティン）」をご紹介します。このCD、収録されている曲はどれも1950年代の”洗練されたニューヨークJazz”のド真ん中にして、アルバムのジャケットが有名な作品でもあります。”名盤はそのジャケットまで美しい”とは言いますが、正に収録された作品と同じくらいキャッチーなジャケットです。では、早速アルバムタイトルナンバーをどうぞ!!

どうしてもアルバムのジャケットに目が行ってしまうので、内容が軽視されがちですが、ピアニストのソニー・クラーク名義の作品なのにもかかわらず彼のプレイがあまり目立たない、アンサンブル重視の曲調が多いです。勿論要所要所で彼の華麗なソロが随所に散りばめられていることに気が付きますが、一歩引いたハーモニー重視の作風というのが大きな特徴です。トランペットのアート・ファーマーとサックスのジャッキー・マクリーンの息の合った演奏も良い味が出ています。軽やかで煌びやかな作品で、私のお気に入りの一枚です。

ソニー・クラークというとこちらも若くして非業の死を遂げたジャズマン。若干31歳でドラッグの大量摂取により死去しています。どうしてこの時代のジャズマンは短命なんでしょうか、非常に残念でなりません。彼の作品の代表作は今回取り上げている「Cool Struttin」と「Sonny Clark Trio（ソニー・クラーク・トリオ）」の2枚で、特に後者のトリオの作品の方が評価が高い作品になります。前者と後者の違いは実に明快で、ソニーのピアノがメインで前面に出ているのがトリオの方で、アンサンブルやハーモニー重視が「Cool Struttin」という見方でまず間違いないと思います。あまり自己主張しない作品でもあるので、ちょっと演奏時間が短いのが難点ですが、ボリュームを絞ってBGMとしても流せる一枚だと思います。私は両方とも好きです。

先にも触れた通り、日本のマーケットでは大人気のソニー・クラークですが、実はアメリカのジャズの世界では主役を張れるトップクラスのジャズマンとしては認められていません。確かにビル・エヴァンスの様な芸術性やキース・ジャレットの様な神秘的なピアノプレーをするアーティストではないです。言葉は悪いですが没個性のピアノ弾きなんですね。しかしながら彼の献身的なプレイはサイドマンとして評価され、数多くの作品に参加しています。特に仲の良かったビル・エヴァンスはソニーの死後、ソニーのトリビュート作をリリースするなど、当時ソニーは一定の評価をされていたジャズマンであったことに間違いはないと言えます。ま、周りが強烈過ぎたのが原因で影が薄くなっているんだと思います。

話が行ったり来たりとしていますが、この「Cool Struttin」は誰にでも愛される作品だと思います。耳に残る軽やかなサウンドと明るい楽曲はジャズの入門者、初心者には打ってつけの一枚です。嫌われることのない作品として、これからも日本人のハートをガッチリつかんで離さないスタンダード作品です。「良さが分からん」なんて言う評論家の方々もいますが、そんなことを言う人は無視して思い切り小粋な演奏と楽曲を楽しみましょう!!

Cool Struttin

• アーティスト:
• 出版社/メーカー: Blue Note Records
• 発売日: 1999/04/07
• メディア: CD
  
  

  Sonny Clark Trio

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Blue Note Records
  • 発売日: 2001/12/13
  • メディア: CD