ちょっと物語が端折られ過ぎか・・・でも予想以上「レ・ミゼラブル」 [映画]
ミュージカル映画としては間違いなく傑作です
昨年公開され日本中で社会現象を起こしたミュージカル映画「レ・ミゼラブル」をようやく見ました。なんと言っても監督は口パク撮影を一切禁止し、俳優陣に演技をさせながら実際に歌わせたという俳優泣かせな撮影を敢行したということで話題になりましたね。主人公ジャン・ヴァルジャンを演じたヒュー・ジャックマンを始め、歌唱力と演技力の両方を持つ豪華キャスト揃いとなると観ないわけにはいきません。
「レ・ミゼラブル」というと、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴ―の代表作にして世界的ベストセラーです。日本では私の世代以上は「ああ無情」のタイトルの方がピンと来る人が多いと思います。フランスの動乱期を舞台に主人公ジャン・ヴァルジャンの波乱の人生を通して貧しい民衆へのエールと間違った社会システムからの脱却という壮大な人類愛をテーマにした大河小説です。実にフランスらしい小説です。ジャン・ヴァルジャンを中心とした多くの登場人物を巻き込み、物語が大きくうねる展開は非常にダイナミックで、現在販売されている完訳版の岩波文庫版は全4巻と相当の長編になります。この大ベストセラーは後々ミュージカルや映画、漫画にもなり広く世界中で愛される世界的名作となり、今回作成された映画「レ・ミゼラブル」はミュージカルをベースにしたミュージカル映画で、原作とは少し内容が違い2時間半と映画では長い作品ながら、原作の良さをある程度残したコンパクトな仕上りになっています。
先述したように映画は2時間半ですが、展開がメチャクチャ早いので飽きません。正直ジェットコースター映画です。しかもセリフはほとんどなく全てが歌なので物語は容赦なくガンガン進んでいきます。私は物語を知っているので流れについてけましたが、多分観ていて「んんっ!!??」と展開についていけなかった人も多いのではないでしょうか。特に物語のクライマックスに当たる革命までの展開は超高速です(汗)。一応、ファンテーヌが歌う超有名なアリア「夢破れて/I dreamed a dream」は開始30分で聞けちゃいます。ちなみにこの曲は数年前にイギリスのスーザン・ボイルがオーディション番組で歌い一世を風靡したあの曲です。Youtubeでその時の映像をどうぞ!!
この曲は愛する人に捨てられ愛娘コゼットの為に美しい髪を売り、最後は娼婦に身をやつしたファンテーヌが自分の人生はこんなはずではなかったと歌う悲哀に満ちた曲です。曲を聞く度に私は滂沱の涙です・・・よよよ。病に侵され先が長くないと知ったフォンテーヌは市長(変装したジャン・ヴァルジャン)にコゼットを頼み、あの世へと旅立ちます。
哀しみの象徴のファンテーヌの他にも、ジャン・ヴァルジャンを追いかけるジャベール警部には「グラディエーター」のラッセル・クロウがキャスティングされ、ビックリする歌唱力を披露しています。ラッセル・クロウが幅広い役柄をこなすことは知っていましたが、なんとオーストラリアではロックバンドのリードボーカルとしてアルバムまで出していたと聞いて二度ビックリです。そんなジャベール警部は映画のなかでは最後までジャン・ヴァルジャンを追い詰める嫌な奴のままでしたが、原作では彼も改心(?)するのですが、ミュージカル版も悪人のままなのかしら?そうだとするとちょっと勿体ないですね。また、ジャン・ヴァルジャンが生涯をかけて大切に育てるコゼットの夫マリウスは超好青年に描かれていますが、原作ではこちらも誤解によりかなりジャン・ヴァルジャンとコゼットに酷なことをしたりします。映画版では一切カットなのは当然ですねか。私はミュージカルを見たことがないので、いつか見てみたいですね。
この「レミゼラブル」の有名なエピソードは何より銀の燭台ですね。この燭台のエピソードは子供向けの本に良く登場します。燭台のエピソードが強く印象に残り"キリスト教礼賛の内容"にはなりますが、ジャン・ヴァルジャンにとっての燭台のように「心の支え(信仰)があると人は強くなれるし、人を愛することが出来る」というユーゴ―のメッセージだと思います。"愛の国フランス"のロマン主義の文学らしいですし、こういったテーマは不変のものであり未だに多くの人に読み継がれていることに納得できます。"愛"の意味を理解し、人を恨むことの空しさを知ることによって犯罪者(罪びと)から聖人になることも出来るんだというユーゴ―の思いと強いと、苦しみや辛酸を舐めた経験がある人間だけが手に入れることが出来る不屈の精神を描くことによってユーゴ―が理想とした民衆の力で社会は変えられるという熱い思いがこの作品には込められています。
映画だとどうしてもカットしなければならないエピソードや重要人物がたくさんいます。私が初めて「ああ無情」を初めて読んだのは高校生の時だったんですが、今でもその時の内容が鮮烈に頭の中に残っています。今回映画を観て久しぶりに読みたくなり岩波文庫版をAmazonで早速ポチったのはいうまでもありません(苦笑)。フランス人の血の中に流れるパワフルさは日本人にはないものですよね。革命を何度も成功させることが出来るのはフランス人だけでしょう。日本人もある意味、彼らのパワフルさを見習うことが必要かもしれませんね。
理想に燃える熱い血潮を感じるミュージカル映画「レ・ミゼラブル」、必見です。本もおススメです。
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